改修によるリポジショニング戦略

ポジショニングからリポジショニングへ

マーケティングの世界では教科書のように取り扱われているという「ポジショニング戦略」という本。知人に勧めで読んだのですが、なるほど勉強になりました。

さて、そんなところ日経アーキテクチャ 2018年12月27日号によるとアメリカでは「リポジショニング戦略」として、既存建物の大規模改修が続々と進んでいるとのこと。半世紀以上も街区の風景を象徴してきた旧ビルの特徴を残したまま、ファサードの大幅な刷新や設備の更新を行い、賃料を1.4~1.5倍に上昇させているプロジェクトを紹介しています。

改修によるリポジショニング

建物はできた瞬間から風雨や紫外線などによる材そのものの劣化や使用することによる設備機能の低下など物理的な劣化が始まります。また、時代・市場の変化、法律の改正などによる建物を取り巻く環境・条件の変化による相対的な価値が変化(多くの場合は価値が低下)していきます。
リポジショニングは、そういった劣化や変化による建物の価値の低下に対して、現状の市場でのポジションを把握し新たなポジションを構築するような改修を行うことで、建物の価値を高めていこうとするものです。
新築建築物の工事費において、土工・躯体工事費は一般的に工事費の30~40%程度を占めます。使用できる既存躯体であれば多少補強する必要があっても、活用した方がイニシャルコストはかなり小さくなり、経済的な合理性が高まるという可能性が大きいといえます。

周辺環境・技術・デザインの変化

建物に対する直接的な変化として、周辺環境の変化や技術の向上、デザイン潮流なども大きな変化となります。
虎ノ門ビルファサード改修では築40年の鉄筋コンクリート造の建築物に対して、耐震改修と設備更新を行い、デザインを一新して新しい価値を付加し、新たに市場に投入するというプロジェクトでした。

当該ビルが竣工したころはまだ周辺は低層の建物ばかりだったようです。
当時の周辺の写真が「毎日新聞 昭和毎日」に掲載されています。
https://showa.mainichi.jp/ikeda1960/2008/05/ik029200.html

その中で9階建の建物はかなり突出していて、遮るものがほとんどなかったと想像されます。二方向に道路に面した敷地において、長辺側に主開口を設け建物が計画されたようです。
しかし、国道1号線に面した当該敷地の周辺は次々開発が進み同程度の高さの建物が建っていく中で、主開口側は面対する建物に塞がれ、当該建物は街の中に埋没していきました。途中に国道側の外壁にアルミパネルが施されリニューアルはした模様ですが、建物の顔となるべき面に対して背を向けているような佇まいは周辺の環境に対してあまりにも弱く、埋没していったように思います。

そこでファサード改修では、 “切りっぱなしのガラス“をイメージした一つの大きな面として周辺建物との差別化を図っています。

既存壁を撤去し、層間区画に必要な900mmの腰壁をカーテンウォールの背面に設置し、ガラスリブを用いてガラスカーテンウォールを支持することで浮いたガラスとなるように設計しています。

閉塞感があったオフィス内も、腰壁の高さも下げて国道側にも開くことで天井高さを変えずとも明るく開放感のある内部に仕上がっています。

長辺側外壁腰壁と同材のアルミスパンドレルを用いてファサードの奥行き感と透明感を強調し、ガラスはストラクチャーシールを用いて、竪枠の見付を限りなく小さく(30mm)としています。

周辺環境の変化を踏まえ、向上した技術を用い現代に相応しいデザインを付加した事例です。


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