吹抜けを利用した自然換気

煙突効果による風の流れ

「煙突効果」という言葉をご存知でしょうか?

煙突内の暖められた空気(排気)が勢いよく上昇していくのと同じ現象を利用したもので、「縦に細長い空間を利用して下方から上方への空気の流れを生み出す」ことです。

煙突効果:建物の場合、人体発熱や機器発熱、日射などで暖められた空気が上昇。細くて長い煙突状の空間に集められることで上昇気流が発生し、建物全体に空気の流れをつくることになる。

暖められた空気が自然に上昇していく力を利用するため、外部が無風状態でも建物内に空気の流れを“自然のエネルギー”で生み出すことが可能です。

自然エネルギーの活用 ⇒ 環境配慮+コスト削減+α

現在、そしてこれから自然エネルギーの活用は環境配慮の観点で大変重要な課題です。

建ってしまえばそこに存在し、運用されていくことで活用されていく建築物は、一般的に建設段階よりも運用段階により多大なエネルギーを電力やガスなどを利用して消費しています。その運用段階の電力やガスなどのエネルギー消費を抑えるため、運用段階に自然エネルギーを活用していくことが重要です。

これは、環境問題の対策としてだけではなく建物生涯通してのコスト(LCC:ライフサイクリングコスト)を削減するという点においてもとても有用です。

特に、オフィスビルなどの業務系建物においては、人や照明・OA機器による熱の発生、閉めっぱなしの窓(騒音の問題や書類の飛散などのため)により暖房使用期間よりも冷房使用期間の方が圧倒的に長く、冷房使用を抑えることがエネルギー消費やLCCを抑えることに直結します。

また、自然の緩やかな空気の流れは心地よい居室環境をつくりやすいですね。自然のそよ風というのは心地いいものです(自然の“ゆらぎ”が関係すると言われます)。

外気を取り込むこと

とはいえ、業務系の建物において一般の窓の開け閉めによる外部から自然の空気を取込むというのは、

  1. 安定性が無い(外部の風状態に左右される)
  2. 外部騒音の影響を受ける
  3. 書類が飛散する可能性がある
  4. (上階は特に)強風の影響を受けやすい
  5. 外部の空気環境の影響を受ける(粉じんや花粉など)
  6. 制御が人の手による(機械等による自動制御ではない)

という問題が発生します。

かつては業務系の建物においても引違い窓の建物が多かったようですが、エアコンなどの性能が上がってきたこともあり、上の①~⑥の問題などを起こさないためにも自然の空気を積極的に取込むということはありませんでした。
しかし、昨今では自然エネルギーを活用した外気の取り込みということが積極的に行われており、その手法なども一般化してきています。

その一つが“吹抜けの煙突効果を利用した自然換気”です。

吹抜けの煙突効果を利用した自然換気

建物内の“吹抜け”、皆さんはどういう印象をもたれますか?

業務系の建物ではエントランスホールがそうであったり、商業系ではエスカレータを含む回遊空間がそうであったり、最近では住宅においても吹抜けが比較的一般的になってきたように感じます。

吹抜けをもつ空間例

吹抜けは開放感や広がりを持たせたり、上下階を繋いだり、上部からの光を取入れるために使用するなど空間的な豊かさを得るために活用されます。

しかし、建物の全体ヴォリュームを大きくしてまでして設ける吹抜けです。
“豊かさだけではもったいない”
と考えだされたのが「吹抜けの煙突効果を利用した自然換気」です。
次回掲載予定の続編では先の①~⑥の問題を解決しながら、吹抜けによる自然換気を行った例をいくつか紹介します。

吹抜けの煙突効果を利用した自然換気を実施している建物の例

⇒ 「吹抜けを利用した自然換気 続編 」 へ

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吹抜けを利用した自然換気 続編 前回掲載の「吹抜けを利用した自然換気」では煙突効果を紹介し、その効果を吹抜け空間に利用した自然換気の手法があるということを紹介しました。 今回の続編では私自身が設計を行った建物での「吹抜けを利用した自然換気」例をいくつか紹介します。

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