線を意識する
形やデザインを決めていくという場面で、空間をどうやって検証しながら設計を進めているか?
鉛筆で絵を描くとき、大体は輪郭線を描きますね。しかし、実際には輪郭線というものは存在していません。面同士の陰影によってそれらが切り替わるところに輪郭が生まれ、実際には存在しない境界が線として浮かび上がってくる。
この実際には存在しないものですがこの境界を線としてどう扱うかということが形を捉えるという部分においてとても重要だと思っています。一つ一つの線を意識的に認識している訳ではないが、それらを総合的に捉えることで美しいとかかっこいいなんて感じているのではないのでしょうか。
建築の形をデザインする上においては、これらの本来は存在しない線を意識して浮かび上がらせて、整理してデザインしていくということを実践しながら進めています。

実際にはない見え方 立面図・展開図
建築図面の中に「立面図」や「展開図」といったものがあります。これは建物の外観や内観について正面や側面などの立画面を投影した図面ですが、デザインを検討する上においてもこれらを活用します。
人間の目から見える建物は外観であっても内観であっても必ずパースがかかっていますから、「立面図」や「展開図」のような見え方というのはあり得ません。


しかし、例えば同一面に並んだ窓の高さについて、「立面図」ではその高さのそれぞれの関係が一目瞭然で見て取れます。「展開図」においても、隣り合う異なる面を横に並べることで、それぞれの要素同士の高さ関係などがよくわかります。
それぞれ存在する線が、揃っているのか、ずれているのか?間隔は適当か?線が作っている形状のプロポーションは美しいか?
実際にはない見え方ですが、「立面図」や「展開図」によって線を意識してデザインすることが重要だと思います。

何事もそうだと思いますが、複雑な問題を複雑なまま解くのは難しいものです。しかし、自分自身が理解できるように複雑な問題を単純化して、”理解しながら解いていく”ということは重要だと思います。
コンピューターの演算能力が上がり複雑な問題を複雑なまま解くことができるようになってきましたが、それでも”理解しながら解く”ということは重要だと思っています。単純化すること、ここでは3次元の建物を2次元に下げて考えるということ実践しているのです。

形の検討、線を揃える、消す

写真はある住宅の廊下ですが、ここでも、線を揃えるとか消すということを意識しています。
廊下に面した壁には引戸、外開き戸、内開き戸と何種類かの扉並んでいます。扉の開き方が違う扉を並べてつくると実は同じ有効高さでも高さや扉と枠の凹凸が微妙に異なってきてちょっとだけずれたりします。このちょっとずれてるというのが問題で、全然違うのならまだいいのですが、ちょっと違うとそれは「間違っちゃった?」という感じでかなりおかしく感じます。

ここでは、白い壁材で切り取られた開口に扉の面材が少し引っ込んでいて、それらの上面の高さが階段部分の天井高や間接照明の下端高さと揃って、シャープで緊張感ある空間となっています。

扉の枠が無いように見えますが、壁からの出寸法や見付寸法を通常より小さくして、壁と同色で塗装して線を消すということを行っています。スッキリしたデザインとするために線を消すということも、かなり意識して設計しています。

人間の目って思った以上に色々な情報を無意識に取込んで総合的な判断をしている訳ですが、意識的に扱うことで緊張感ある空間となるよう心掛けています。