建築のデザイン こだわりのディテール① ガラスカーテンウォール

建築のデザインにおいてとても重要なディテール。建築家はデザインする建築において、そのディテールまでこだわってデザインを実現しています。ここでは建築家として目指すデザインを実現するために熟考を重ね、設計協力者や施工者・メーカーと協働の上に実現したこだわりのディテール例を紹介します。

今回はガラスカーテンウォール。外観の印象を左右することが多いだけに設計時からかなり力を注いでいく部分です。

浮いた切りっ放しのガラス

築40年以上の鉄筋コンクリート造のオフィスビルのファサード改修にて採用したカーテンウォールのディテール。シンプルな切りっ放しの1枚のガラスをイメージした外観とするためガラスリブを用いて見付30mmの縦枠を支持し、「浮いたガラス面」を支えている。

ガラスカーテンウォールの図面
切りppなしのガラスカーテンウォールのディテール

ガラス越しにリブ形状の外壁が滑り込んでファサードの奥行き感と透明感を強調している。

↑コーナー部のディテール。持出しのガラスは横無目によって支持されており、片側はガラスの切りっ放しとなっている。横無目の水切りは無目より300mm手前まで、無目から100mmガラスが持出している。
↑ガラスリブからステンレス金物で支持される竪材。ストラクチャーシールで工場先付されたピースを固定する方法で見付を30mmに抑えている。
↑内部よりみる

浮いた白い縦リブが連続するシンプルなガラスカーテンウォール

ブラック&ホワイトでデザインされたシンプルなデザインのテナントオフィスビルのガラスカーテンウォール。昭和鋼機(現在の昭和リーフ)によるもの。

ペンシルテナントビルの外観

小規模な耐火建築物(1500㎡未満)として層間区画による耐火壁部分(スパンドレル)を省略してシンプルなフロア・トゥ・フロアのカーテンウォールとしている。日射除けの小庇の間に挟まった2次電解着色(黒)カーテンウォールの外側は太陽光により白色に見えるシルバーアルマイトのリブ付の押縁であり、黒いカーテンウォールのガラス面にひらひらと連続して浮いた白い短冊のようなデザインとなっている。リブは小庇に近接する上下で切り取ることで、ひらひらした軽やかな印象を与えている。

個別のダブルスキンがくの字に連続するガラスカーテンウォール

遮音と断熱と換気の3つの機能をもつダブルスキンカーテンウォール。

  1. 遮音

交通量が非常に多い幹線道路に隣接する。窓の外側にガラスーテンウォールを設置したダブルスキンとしているため、自然光を取り入れながらも外部騒音を遮断している。また、中間期は自然換気を行えるよう外気取入口は壁面を利用して外壁の開口から室内の給気口まで長い距離を取り、外気排出口は上昇気流が発生している直接外気に面しないダブルスキン内に設置することで、自然換気を行う上でも幹線道路からの騒音を低減している。

  1. 断熱

断熱上最も弱点となる窓の外側にガラスーテンウォールを設置したダブルスキンとしているため、自然光を取り入れながらも窓面からの熱の流出入を抑えている。ダブルスキン内は上部の換気窓を夏季:開、冬季:閉とする。

  1. 換気

建物全体として自然換気を行うのではなく、各室でそれぞれ自然換気が独立して成立させるため、同一の外壁面から給気と排気を行い、排気はダブルスキン内の吹抜けの煙突効果を利用して外部に排出されるという仕組みとなっている。窓を直接開けるという方法でないため、強風の影響で書類が飛ばされるということもない。

↑ガラスボックスの平面
↑同一面から外気取込み、熱気排出する仕組み。熱気はガラスで囲まれたダブルスキン内に排出され煙突効果により上昇する。

室のレイアウトが各階バラバラ、階高も各階バラバラ。内部をそのまま外観とした場合、統一感がなくバラバラな印象となるため、短冊状のガラスボックスをアルミの帯で繋ぎ、くの字に連続させて外観に透明感と統一感を与えている。

↑短冊状のガラスボックスが連なる前面の道路からみる。アルミの帯が水平に連続している。 ↓短冊状のガラスボックスの片側はガラス、片側はアルミとなっており、左右で異なる表情となる。

GRCルーバーと一体化したガラスカーテンウォール

奥行きの深いオフィスを明るくするための全面ガラスカーテンウォールにおいて、日射遮蔽・プライバシー確保・反射による間接光の取入・恐怖感の低減・周辺環境との意匠的な調和などのために設置されたGRCルーバー。テナントオフィスとしてフロア面積を最大限確保するために、必要最小限の奥行とすることが必要であった。

一般的に、カーテンウォール前面にルーバーなどを取り付ける場合、カーテンウォールから独立した下地材を設置して取り付けることがほとんどである。軽量のアルミをカーテンウォールに取り付けることはあっても、重量の大きいコンクリート系材料であるGRCをアルミのカーテンウォールに支持させることは容易ではない。その上、ヴィジョン部はできるだけ透明にアルミ材を目立たない様にすることを目指した。

アルミ内部にスチールの補強材を設置して、スチール丸鋼をブレース材として設置して地震時の水平力に対抗する仕組みとしている。

↑アクソノメトリック

ガラスクリーニングのために、ガラス面の前面となるGRCルーバーはガラス面と離し、アルミの前面となるGRCルーバーはアルミと隙間なく設置している。

先端には全体としてシャープな印象となるようにアルミ型材を設けて、降雨時に水を切るディテールにしている。

↑GRC取付の詳細断面
↑ヴィジョン部の竪材は外部側を切り欠きアルミ材の見付を17mmに抑えてできる限り存在を消している。非常用進入口部分ではピース材を設置してガラス厚を抑え、消防隊進入時にはガラス破壊による建物侵入ができるように計画されている。

次はサッシを含む外壁廻りのディテール。よろしければ続けてご覧ください。

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