複雑化する建築のデザイン
建物を設計する上で、要望や条件は様々です。
それらの要望や条件は往々にしてトレードオフの関係(お互いの条件などを引っ張り合う関係)にあったりして同時に満たすというのはなかなか難しいですが、仮にそれらを足し算的に加えることができたとしても、多くの場合、建物のデザインとしてよくならないということが多いと思います。
「住宅は住むための機械である」という言葉で有名な近代建築の大巨匠ル・コルビジェは現代の建築家にも大きな影響を与えている(特に晩期を除き)機能主義的建築家の一人ですが、その建築作品はとても合理的であり、そして、とても美しいです。「形態は機能に従う」という機能主義ですが、形態は内部の機能をそのままにした形ではない、どう見えるかという部分においても機能的で、合理的で、美しいのです。
平面が決まっていたところで
あるプロジェクトの話。
私がそのプロジェクトに参画したのは、もうすでにほぼ平面が決まっている状態。
そこから平面のブラッシュアップを含む全体的なデザインを依頼いただき任されました。
平面が決まった状態で設計の依頼を受けることやプロジェクトに参入することはあまりありませんが、既存建物のファサード改修(例:虎ノ門ビルファサード改修)などもある意味平面が決まっている上でのデザインですから、同じといえば同じですね。
さて、このプロジェクトではじめにもらった立面図は下のようでした。
世の中にある建物の多くはこんな感じです。内部の機能的な要件や構造的な条件をもって間取りをつくり、それに合わせて半自動的に外観をつくって、テクスチャー・色を与えて終わり。
実際、平面(間取り)図だけ描けてしまえば、後は自動的に住宅の3Dモデルが立ち上がるなんて3DCADソフトもありますし、今後AIが進んでいけばよりその傾向が強くなるでしょう。(AIによる省力化を否定しているわけではありませんよ。)
しかし、折角つくる大きな買い物。もっとよくできると思いデザインしていきました。
異なる条件・違う要素をまとめる
住宅としてはかなり大きめの階高によって1階・2階に等分に分かれ、すべて異なるスパンで柱型を前面にした、そのままの立面。ずんぐりむっくりな印象。
柱割も窓も平面から決まっており、内部の条件から大きくは動かせない。
そんな条件の中、プライバシー保護のため室内とテラスの間に取付予定の外付けブラインドをテラスの外側へ移動。同ピッチの間柱を置き、間柱間に外付けブラインドを設置し、広いテラスを半屋内化。軒先を十分持ち出し、バルコニーの手すりとカウンターテーブルを兼用した小庇で1階と2階のボリュームバランスを変換し、シャープで伸びやかな外観としています。
この作品はこちらでご覧いただけます。