建築士

建築士法改正

昨年(2018年)12月14日に改正建築士法が公布されました。2年以内の施行予定となっていますが、この改正では建築士となるための要件が変わります。

社会問題となった耐震偽装問題を受けて改正された2008年の建築士法改正では実務経験の厳格化がなされ、建築士試験の受験要件として実務経験が必須となりましたが、今回の改正では実務経験は免許登録要件となり、学歴などの要件を満たせば実務経験がなくても試験を受けることができるようになりました。

この背景には1級建築士の受験者数が大幅に減少(2009年 約5万人→ 2018年 約2.5万人)しており、高齢化(若手不足)が進んでいることがあります。

試験は受けて合格しても建築士になるためには改正前と同じ実務経験が必要となるので、結局同じといえば同じなのですが、大きなハードルとなる建築士試験を早いうちから(例えば学生の内や就職後すぐに)受けることができるということで、柔軟性が高まるということでしょう。

私の場合は合格するまで大学院修了後(就職してから)4年かかりましたが、合格する上で何が一番大変だったかといえば、多忙な業務をこなしながら試験勉強するというところ。それを学生の内から試験を受けることができるようにしたということが一番の狙いなのだと思います。

学校側からは「本業である学業を疎かにする」という懸念も出ていますが、個人的には2008年の建築士法改正の意義を担保したまま柔軟性を高めた運用方法として評価できる改正だなと思います。

以前は実務経験も全くない、資格としてだけの「名ばかり建築士」という人もかなりいらっしゃいましたが、2008年の建築士法改正以後、そのような「名ばかり建築士」という方はかなり減ったように感じます。

建築士資格とは?

建築士とは「建築士法」により定められていた国家資格ですが、一級建築士・二級建築士・木造建築士の3種類あります。それぞれ設計・工事監理できる建築物に違いがありますが、一級建築士は二級建築士・木造建築士を包括する資格で、日本国内においてはすべての建物の設計および工事監理を行うことが可能となっています。

足の裏の米粒

さて、設計や工事監理の業務に携わるすべての者がこの資格を有しているか?
答えは“No”
建築士資格を持たない建築家も結構いらっしゃいます。

俗にいう「建築家」とは一般には自称といえるもので、極端に言えば「私は建築家です」と言ってしまえばだれでも建築家を名乗ることができるものですが、建築士資格のないものが「私は建築士です」といって建築士の業務を行うことはできません。

昨年、神奈川県で無資格者が実在する建築士をかたって住宅の設計や確認申請などを手掛けていたことが発覚しましたが、このようなことは稀にではありますが、実際に起こっています。発覚するのは氷山の一角である可能性もあり、十分注意が必要です。

さて、世の中にどのくらいの建築士が存在するかご存知でしょうか?
私の建築士番号は30万台の番号ですので、建築士資格の制度ができて私が取得とするまでの間に30万人以上の一級建築士が生まれています。建築技術教育普及センターHPによると現在36万人以上の一級建築士が登録(2018年6月現在)されていますが、基本的には一度取得し、登録すると有資格者のまま。(建築士事務所に所属し設計等の業務を行う者は3年ごとに講習を受講し更新することが必要)
現在は死亡すると届出を提出する義務がありますがそれも戸籍と連動している訳ではないため、登録者数=現在の資格所有者数にはなっていません。

一級建築士の昨年の合格者数は3,827人、過去5年で毎年、3000~4000人の一級建築士が生まれています(建築技術教育普及センターHP)。

一級建築士合格者数の推移

私が取得した頃とは試験制度や受験要件など少し変わっていますので試験内容などについては詳しくは分かりませんが、現在は合格率10数%。弁護士となるための司法試験も20数%の合格率ですから、試験そのものの難易度はさておき、合格率で言えば難関国家資格の一つといえるでしょう。

一級建築士受験資格

しかし、そこまでして手に入れた建築士資格ですが、(特に組織などに属していると)自嘲気味に「足の裏の米粒」なんて言われます。

「取らなければ気持ち悪いし、取っても食えない」

他の資格や博士号についても同じように言うことがあるようですが、一級建築士が全国に30万人程度いる中で一級建築士であることが特段特別なことではないということでしょう。

建築士の職責

では、建築士資格の取得は不要なのか?
「会社などの組織に所属し、設計および監理業務を行う」
「建築士としての責務は他者に任せ、デザインや経営などに特化する」など
であれば、資格としてはマストではないかもしれません。実際、そういう実務者もかなりいます。

しかし、建築士法では建築士の「職責」として以下のように定めています。

建築士法 第12条の2
建築士は、常に品位を保持し、業務に関する法令及び実務に精通して、建築物の質の向上に寄与するよう、公正かつ誠実にその業務を行わなければならない。

建築士である以上、建築基準法等などの直接的な責務が発生する立場ではなくともその職責のもと設計などの実務を行うことが求められます。

子供が憧れる職業

娘の学校の1/2成人式において40人程度のクラスメートの中、建築士(建築家)を将来の夢と発表したのは2名でした。
民間の調査によると
FP協会 2017年度 男子:5位
(株)クラレ 2018年度 男子小学6年生:9位
など、人気のある職業の1つです。ひとくちに建築士といっても、その幅はかなり広くいろいろな形の建築士がいますが、私も中学2年生のとき、建築士になりたいという漠然の想いをもちました。

さて、これからAIがますます発達していく中、建築士のあり方や設計の方法などもどのように変わっていくでしょうか。
2045年にはAIが人間の能力を超えると言われています(2045年問題)が、これからも建築士が必要な存在として求められ、子供の憧れる職業として生き残っていくためには・・・。

自分自身でも考えていく必要があるかもしれません。

大学院時代の修士論文:コンピュータを援用し、AIなどの研究分野で採用されていた「遺伝的アルゴリズム(GA)」を活用した住宅の設計手法の研究。建築設計において無数にある(建材選択と建物形状の)組合せの中からトライ・アンド・エラーにより設計条件に適合するものを探索する過程に似た試行をGAを用いて実施し、設計における発想の助けとなることを目指した研究


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