テナントビル内の保育園の拡張計画。使いながらの工事を実施し、保育園の稼働を止めることなく快適な保育環境を提供することを目指した。 テナントのためプランや開口部(窓)に制約がある中で、法的要件を緩和するなどの方法により遊戯室やランチルームなどに活用できるホールを中心として、使いやすく全体として一体的な保育園にリニューアルしている。 別設計者のデザインによる既存保育園に対して既存のデザインを尊重しつつ、緑の葉や青い空をイメージさせる仕上材を施すなど特徴的なデザインの保育園となっている。
①園児と保育士が快適に過ごしやすい動線計画/②保育園を稼働しながらの工事の実施/③既存部分のデザインの尊重しながらのデザイン/④狭くて食事が提供がスムーズでない調理室の拡張と改良
① 当初拡張時の予定プランをディベロップしたプランニング
既存保育園は完成当初より拡張を想定しており、その予定プランが計画されていた。しかし、そのプランのまま拡張を行った場合、動線が長くなることや保育室の窓が取りにくいという問題があった。
そこで、既存部分と拡張部分を合わせた保育園全体として機能的で快適なプランを提案し採用された。園児と保育士の動線は整理され、ランチルームや遊戯室としても活用できるホールを中心とした使いやすいプランとなっている。
② 水廻りを分散・段階整備とし、使用できない期間を発生させない建築計画
工事手順を整理して水廻りを分散・段階整備とし段階的に使用可能にすることにより、使用できない期間を発生させない計画としている。床下に配管が敷設できる範囲が限定される中で配管を盛替えを想定した建築計画となっている。
③ 窓が無いことを逆手に取った特徴あるデザイン
保育施設では適切な保育環境確保のため採光は重要となっており建築基準法により基準があるが、窓の配置があらかじめ決まっているテナント保育園の場合はしばしばこれらがプランニングやデザインの制約になる。
本計画でも、窓面の位置や大きさが限定されており、奥行きの深い空間をどう活用するかが課題であった。
直接窓がない空間はランチルームや遊戯室として通常の保育室を補完する役割を持つホールとして、建築基準法内の採光緩和基準を用いて計画している。外部環境に接していない空間として、空や緑を模した仕上げを部分的に取り入れて、空間に色合いとアクセントを加えた独特で特徴あるデザインとしている。
トイレは再利用する既存手洗の色を拠り所に原色系の手洗と腰壁を配して園児が認識しやすくし、コミュニケーションが取りやすくなることを期待している。
④ 調理室内の使いやすさと配膳のしやすさを大幅に改善した調理室の拡張と改良
既存の調理室は狭く使いにくい上、窓もなく決して居心地が良いとは言えない状態であり、加えて調理された料理は段差がある下足の玄関を通過して保育室へ運ばなければならず、配膳にも難があった。
そこで、調理室を拡張して厨房機器の再配置し、保育園の中心となりランチルームとして活用できるホールから配膳可能なプランとしている。
また、調理室から保育室の様子も窺い知ることができるよう保育空との間に窓を設けており、調理室内の閉塞感を緩和している。
用途 :保育園(テナント)
延床面積 :275.90㎡(拡張範囲)
所在地 :広島県呉市
施工 :有限会社 宮川工務店