家の設計図面 矩計図

かなばかり

家を建てるとなった時、コミュニケーションの手段となるのが設計図です。家の設計図というと真っ先に思い浮かぶのが間取り図だと思いますが、その他にも様々な種類の図面があります。

その中の一つに「矩計(かなばかり)図」という図面があります。

建築学用語辞典 第2版(日本建築学会編)によると「建物の特徴を典型的に示す断面図。各部分の標準的な高さ関係、材料、詳細、架構方式などが示される。通常、一般の断面図よりも大きい縮尺で書かれる。」と記載されています。

基礎から屋根までの様々な情報を垂直方向の断面として詳細に描いたもので、高さ関係、材料、詳細、架構方式などを同時に示すことで機能性や納まりはもちろん、建物の成り立ちや考え方まで示します。特に窓廻りの詳細を描くことが多く、設計者が意図する内外の関係性やデザインの考え方なども読み取ることが可能です。

私はこの矩計図をとても重要視していますが、かつて設計事務所に勤めている時には沢山の矩計図を描くということで、「断面マニア」と言われていたこともあります。

それはさておき、矩計図とは?

どういった内容のことが描かれていて、どういう風に読み取るのか?簡単ではありますがここで書いていきたいと思います。

↑木造戸建住宅の矩計図の例

矩計図に描かれていること

建築が内と外の境界線をつくるというものであり重力に逆らって地上に建つということから、外壁および窓廻りを含む垂直方向の矩計図には、基礎を含む構造や架構の考え方、防水性能、断熱性能や日射遮蔽性能といった建物が持つべき機能性の部分について多くのことが描かれています。

例えば、

  1. 基礎の形式

ベタ基礎か布基礎か?

  1. 構造・架構

どういった構造形式、架構で建物が成り立っているか?

  1. 断熱性能

断熱材はどの範囲にどのようなものが使用されているか?

断熱ラインは連続しているか?

  1. 防水性能

屋根の勾配はどうなっているか?雨水の処理はどうなっているか?

水切りになどによって水が切られているか?

防水上弱点となりそうな部分に適切な処理がなされているか?

  1. 日射遮蔽性能

日射に対する対応はどうなっているか?

  1. 窓廻り

窓・腰壁・垂れ壁の高さはどうか?

内外の関係はどうなっているか?

など。。。

建築をかじったことでもない限り詳細までは分からないと思いますが、これらの情報は矩計図をもって確認できると思います。

↑1階:鉄筋コンクリート造、2・3階:木造 の混構造の戸建住宅の矩計図の例

図面の読み取り方

私もよくやる方法ですが、図面を理解する場合の方法を紹介します。

  1. 基礎の形式
  2. 構造・架構
  3. 断熱性能 について

それぞれの部材などについて色を分けて塗ってみる。部材ごとに色分けするとどういった構成で部分が、また全体が出来上がっているかが分かります。また、断熱ラインはどこか?それはつながっているのか?

↑ピンク:コンクリート躯体、茶:木造躯体、青:断熱材
  1. 防水性能 について

水の流れを描いてみる。水は基本的には上から下へ流れます。水が流れていく過程であふれてしまって逆流するようなところはないか?特に、凹凸部分、材料が変わる部分は、どういった工夫がなされているか?

↑降った雨は一方向に流れる。
  1. 日射遮蔽性能 について

日射の射し込み方を描いてみる。(←これは少し専門(図学の)知識がないと難しいですが・・・)

断面図ですべての時間の日射についてシミュレーションするのは手間がかかりますが、夏至、冬至、春秋分の午前、正午、午後についての日射の入り方を描いてみると建物の日射遮蔽性能が絵柄となり、理解しやすくなります。

↑夏至と冬至 AM11:30頃の日射。太陽高度に対して方位の補正をかけて日射ラインを記入する
  1. 窓廻り について

人を描いてみる。

立った姿勢、座った姿勢、寝転んだ姿勢などその場所で想定される人を描いてみる。特に目線の位置。内部からの目線の他、外部からの目線との関係を読み解くことができます。

はじめはよくわからないかもしれませんが、描いてみると意外と理解できると思います。

折角ですのでプロでもやっているテクニックで、図面をよく眺めてみるのも面白いと思います。


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