改善メニュー
2020年、住宅を含めたすべての新築建築物の省エネルギーに対する基準が義務化される予定でしたが、すべての建築物への義務化は時期尚早として、300㎡未満の建築物および住宅について原則義務化されないということになるようです。
とはいえ、建築関係から排出されるCO2の排出量は非常に多くまた、建物内部の温熱環境が健康や身体に及ぼす影響が大きいことも分かってきており、建物の省エネ性能や断熱性能の向上が非常に重要です。今後は住宅においても益々、これらの性能の全体的な底上げが必要となってきています。

建築物に法律が適用されるのは新築や大規模な改修などを実施する場合のみであり、既存住宅をそのまま使用する範囲においては、法律の適用はされません。いくら省エネ法による義務化を行っても、多数存在する既存住宅の省エネ性能や断熱性能の義務化による性能向上は望めません。
しかし、先に書いたように建物内部の温熱環境が健康や身体に及ぼす影響が大きいということが分かってきている中で、厳しい温熱環境に我慢をして、多くのエネルギーを消費してCO2を排出し余計なコストを浪費しつづけることよりも、快適で健康的にエコな生活するために温熱環境などの改善のためのリノベーション(リフォーム)を行うことも増えてきています。
一般的に既存住宅の省エネ性能や断熱性能の向上のために
- 断熱補強
- サッシ改修やガラスの複層化
- エアコンの取替
- 床暖房の追加 など・・・
様々な“メニュー”のによる既存住宅のリノベーション(リフォーム)がなされています。
シミュレーションの有効性
既存住宅のリノベーション(リフォーム)において、環境改善を実施するほとんどの場合上記のような“メニュー”を用いて実施しますが、それらによって実際の空間にどのような効果や現象を起こすのかについてはほとんどの場合設計者や施工者の経験則による判断でしかありません。
特に、建築主様においては実施することによってどのような効果が得られるか、費用対効果は適切なのかについては判断のしようがありません。
それらの効果の予測を行うために、行うのがシミュレーション。建物の3次元モデル化を行い、条件を想定してシミュレーションを行います。
シミュレーションと実際の現象が全く一致することは難しいですが、実施する内容による現象の動きや傾向を捉えることや内容の違いによる相対的な比較をする意味では非常に有効です。

空間を豊かにすることと断熱・省エネ性能を高めることを同時に実現
さて、先に挙げた通り、国としては建物の省エネ性能を高め、建築関係から排出されるCO2排出量を抑えていきたいと考えています。人がコストを抑え快適に過ごしていきたいという方向性と一致させることで現況の省エネ改修などの大きな波となっていると思います。
しかし、
断熱性能・省エネ性能 = 環境性能
と考えてよいでしょうか?
環境とは地球環境などの広い意味と共に温熱環境も含めた居住環境、すなわちそこにいることの心地よさやといった意味もあります。
「空間を豊かにする」ことも「楽しくする」ことも「美しい」ことも環境性能を高めるものであり、温熱環境や居住環境を良好にすることを同時に実現することが重要だと考えています。
たとえば、建物の断熱性能を高めて日射負荷を抑えようと思えば、
①外壁や屋根面積の少ないコンパクトな形とする
②窓はできるだけ小さくして最小限に抑える。特に東西の窓は限りなく小さく
③南側の日除けの庇を付ける
とすれば簡単です。
しかし、それでいいでしょうか?
なんだか最近の戸建住宅ってこんな感じの住宅ばかりだと思いませんか?
断熱性能・省エネ性能 ⊂ 環境性能
“断熱性能・省エネ性能は環境性能に含む”
だと思っています。
勿論、原則として建物として必要な性能を確保します。
その上で、如何に空間を豊かにすることと断熱・省エネ性能を高めることを同時に実現するか。
そのための手法として、シミュレーションは有効なものと考え設計に取入れています。
