ケーススタディによる様々な可能性の比較

設計の前に

建物を計画する上で、どこに、どのような大きさで、どういった機能(内容)で計画するのか?

これらは建物の設計をするための前提条件となります。これらが明確に定まっている場合もありますが、往々にしてこれらが未定であったり、あれやこれやと悩んでおられるということも多いです。

建築設計とは一般的に、建築主から提示される条件を整理して設計条件として整理してそれを基に「基本設計」⇒「実施設計」と進み設計図面を作成していきますが、建築主から提示される条件が曖昧で整理できない場合、まずこの条件を定める必要があります。

可能性の比較

私のところで受ける相談も前提条件となるものが未確定であることも多いのですが、そのような場合、まずは設計条件の設定をしていくために、建築的なケーススタディによって比較するという段階を踏んでいくこともあります。

下の比較表はある提案書における様々なケーススタディの例。
土地があり既存と同程度のスペースを確保した上で漠然とした想いを叶えたいという依頼者に対して、様々な可能性について同列で並行に検討し、比較を行っています。
比較表を作成するための裏付けの検討を行い、最終的な比較表では分かりやすくコンパクトにまとめます。

ここでは計画案の概要、面積、構成、建設費を主とした建設事業費について比較していますが、こうすることで事業などの採算性を検討しながら、目的に相応しい規模や構成などを設定していくことが可能となります。

企画業務

設計監理業務の契約時に使用されることの多い建築設計関係四団体(日本建築士会連合会、日本建築士事務所協会連合会、日本建築家協会、日本建設業連合会)による建築設計・監理等業務委託契約約款では「建築主から提示される条件を設計条件として整理する」ことは基本設計業務の一環となっていますが、「委託者の建築意図および目的の把握と要求条件の明確化」や「建築プロジェクトの企画」については”建築プロジェクトの調査、企画等に関する業務”としてオプション業務となっており、一般的な設計監理業務とは切り離されて考えられています。

どこまでが設計業務としての「条件の整理」で、どこまでが企画業務としての「要求条件の明確化」や「プロジェクトの企画」なのかの線引きは難しいところですが、上記の比較表のように規模も用途も定まっていないような場合はまず、要求条件を明確化する方がよいと思います。

よりよい建築を生むためにその土台となる条件設定を建築のプロの知識を活用すると考えてもらえると分かり易いかもしれません。


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