土砂災害(特別)警戒区域

”災”

昨年末発表された、日本漢字能力検定協会による「今年の漢字」2018は”災”。
2月に記録的豪雪により交通がマヒした「福井の記録的豪雪」、6月にブロック塀の倒壊により児童が犠牲となった「大阪北部地震」、7月に西日本に大きな被害をもたらした「西日本豪雨災害」、9月に目を疑う大規模な土砂崩れが発生した「北海道胆振東部地震」、9月に「非常に強い」勢力のまま上陸して猛烈な暴風と高潮によって被害をもたらした「台風21号、24号」。本当にたくさんの災害が発生しました。
その中でも、「西日本豪雨災害」は私の住む広島でも、多大な被害があり、多くの方が犠牲になりました。運よく私の親族や友人等に大きな被害はありませんでしたが、今でも不自由な生活をされている方もいるとのことで、ここであらためて心よりお見舞い申し上げます。

当時は、豪雨から数日たって甚大な被害が全国に知れ渡るようになりましたが、広島では地震などの被害と異なりマクロな面的な被害の広がりよりも虫食い的な被害が発生し、ある場所では全く被害がないのに同じ地区内の別の場所では甚大な被害が発生しているなど、いつものまちと被災地が混在する特殊な状況でした。

土砂災害の恐れのある“区域”と“箇所”

広島県は土砂災害の恐れのある箇所数が全国で最も多く、これまでも幾度となく土砂災害の被害にあってきました。
広島市周辺は平野が小さく、平地には余地がありません。以前より沢から流れ出る水があり、道が造りやすい川に沿って人々は生活をしてきましたが、人が増えるにつれ宅地として広がり開発されてきました。また、都市部に隣接した急斜面地なども宅地化しています。
こういった場所の多くが土砂災害(特別)警戒区域や土砂災害危険箇所に指定されています。

「土砂災害(特別)警戒区域」は
土砂災害防止法に基づき公表・指定されるもので、法的な規制があります。
「土砂災害危険箇所」は
土砂災害の恐れがある箇所を確認・公表されるもので、法的規制はありません。

※これらは調査の仕方が異なるため、両者の範囲が全く一致はしていません。

広島県の場合、土砂災害ポータルサイトによりこれらの指定・公表状況が確認できますので、現在の自宅やその周辺について確認を行うことや土地を購入するなどの場合は必ず確認しておくべきサイトです。

これらの情報は調査等により想定する災害の範囲であり、指定・公表通りの事象が起こるとは言い切れないものではありますが、中国新聞などによると今回の「西日本豪雨災害」ではこの指定された区域の範囲とほぼ同じ範囲で被害が発生したケースもあるとのことで、様々な判断を行う上での想定として役立ちます。

私が建物の設計を行う上では、敷地における土砂災害や洪水、津波、高潮の自然災害についてはハザードマップによりこれらを確認し、建築主様と情報を共有した上で設計を進めています。

広がる指定区域

一方、今回の豪雨によって被害が発生した場所について、土砂災害防止法による区域の指定がなされていなかった区域もあります。区域の指定については説明会の開催が必要であり、調査上危険だと判断されていた区域でも指定前であったという場合もあります。
昨年末ですが、私の自宅にも説明会のお知らせがポストインされていました(自宅自体は区域に入っていませんが学区の区域の一部が新たに指定されるようです)が、広島県も引き続き区域の指定を進めるとのことです。

土砂災害特別警戒区域(通称:レッドゾーン)

非常に危険な区域であり土砂により建物が破壊され、大きな被害が生じる恐れがあるため、区域内に居室のある建築物を建設するためには窓のない鉄筋コンクリート造の壁などにより安全を確保するなど大きな構造規制がかかります。

土砂災害警戒区域(通称:イエローゾーン)

建築物を建設する場合においては法的には構造規制はかかりません。しかし、今回の豪雨災害ではイエローゾーンの想定区域通りに被害が発生した箇所もあり、十分警戒を行う必要のある区域です。

私が設計・監理を行った傾斜地に建つ研修施設:奥多摩園では敷地内にレッドゾーンがありましたが、建物をくの字に折り曲げた平面形状により、レッドゾーン内から建物を外した上でレッドゾーン側の居室に面した廊下の外壁はコンクリート造とし窓は高窓とすることで想定を超えた被害が発生した場合においてもできるだけ人命を保護する配慮を行っています。

しかし、これらの配慮も一般的な想定を超えた想定であり、それ以上の災害が起こりうる可能性もある一方、当該建物の生涯において一般的な想定の災害さえ起らない可能性もあります。

これらについては、公的な機関が公表・指定している情報を基に各プロジェクトにおいて建築主様と建築士が共に判断し決定していく必要があるものと考えています。


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