建築のデザイン こだわりのディテール③ 外壁廻り

建築のデザインにおいてとても重要なディテール。建築家はデザインする建築において、そのディテールまでこだわってデザインを実現しています。ここでは建築家として目指すデザインを実現するために熟考を重ね、設計協力者や施工者・メーカーと協働の上に実現したこだわりのディテール例を紹介します。

前回はサッシを含む外壁の開口部廻りについて

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今回は様々な外壁納まり。建物の外壁性能と意匠の両面について良いものとしていくか力を注いでいく部分です。

換気シャフトにもなるライトアップのための石張り縦格子

石張りの縦格子のオフィスビルの外観

商業集積地に建つ店舗付オフィスビルの外装。“品のある華やかさ”を醸し出すデザインを目指して、上層部外壁を赤い斑の入ったブラジル産の花崗岩を用いた縦格子としています。塗装やタイルのようにフラットで画一的な表情ではなく、一つ一つがすべて異なる自然石を用いて全体として、ゆらぎのある赤みを帯びた白い縦格子としています。

↑縦格子のモックアップ。使用している石はブラジル産ホワイトローズ

縦格子は雑多な街並みのなかで華やかな存在感を放つデザインとしての特徴の他、様々な機能を内包している。

・事務室内の快適な環境をつくり出す日射遮蔽ルーバー
・ガラス清掃などの外壁メンテナンスに利用できるメンテナンスデッキ
・外気の取り入れを行う給気シャフト
・商業ビルとして建物外部へ情報発信できるサイン設置装置
・夜間も存在感を失わないライトアップ装置

↑縦格子の平面詳細
↑花崗岩仕上PC、アルミサッシ、手摺をつなげるアルミパネルのディテール

これらの複数の機能を統合し、雑多な街並みに埋没しないシンプルで存在感ある縦格子デザインとしている。

構造に見せないラーメン構造の扁平柱

柱梁によるラーメン構造は柱や梁の存在が室内のレイアウトを制限することがある。特に、ホテルの客室のようなそれぞれの室の大きさが小さく、幅など限られる場合には特にその影響は大きくなってきます。

そこで、各客室間は客室の仕切壁毎に細かいピッチで、仕切壁に平行に扁平させて柱を配置する一方、客室の奥行方向にはスパンを飛ばして柱本数を減らして、廊下と平行に扁平させて配置することで、それぞれの方向の水平力に対抗する構造フレームを採用した宿泊施設。

それぞれの柱や梁は、壁と一体化させて、形を与え、機能を付加させることで構造体として認識させず、かつ、室内レイアウトに制約を与えないよう注意しながらデザインされている。

客室

外壁から飛び出して先細りした柱は、陰影を作り出すことでリズムを与え、建物の外観を特徴づけている。

タイル壁を間引いたようなルーバー壁

テラコッタルーバーと壁面緑化の外壁を持つオフィスビルの外観

設備の目隠しとトイレ・給湯室などへの西日遮蔽しながらの採光のためのテラコッタルーバー。外部バルコニーに設置し、ルーバー裏面に雨水・上水・排水・ガスの配管を設置して容易にメンテナンスが可能にしている。

隣接する乾式タイル壁のタイルと色合いと幅を合わせたテラコッタを用いて、タイルのピッチに合わせて、間引くような間隔でレイアウトしてルーバーとしている。

↑テラコッタルーバーの詳細
↑タイル壁の詳細

ライムストーンにような色合いの種石入りGRCルーバー

GRCルーバーのカーテンウォールのオフィスビルの正面外観

計画地近隣は江戸の武家屋敷の面影を残す石垣などが見られる落ち着いた街並みであり、高級住宅地。無機質になりがちなオフィスビルの外観に石(ライムストーン)の風合いを持たせたルーバーを取り付けることで街並みに調和する品のある柔らかさを加えている。

一般にライムストーンは風化が激しく、また、十分な強度が確保できないため外部では用いることができない。そこで、ガラス繊維で補強されたコンクリートに顔料と小さな種石を練りこみ、成形したGRCルーバーを採用しています。

↑自然素材のようなルーバーと杉板型枠コンクリート打放
↑GRCの断面詳細。10mmの厚みの中に種石と顔料が練り込まれている
↑工場内に並べられたGRCルーバー

GRCとはコンクリートに補強のためにガラス繊維を練り込んで成形し硬化させたものですが、一般にはコンクリートのような塊です。硬化したものに後から塗料などで色を付けることが一般的ですが、ここでは自然な風合いを出すために、色のある種石と、顔料を練り込み成形して硬化させた後研磨しています。

↑サッシ工場で組み立てられたモックアップ。工場のGRCを持ち込み組み立てを行っている。

次は「設備を見せないデザイン」。よろしければ続けてご覧ください。

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