建築のデザイン 「内外を繋ぐ」

内外を繋ぐ窓

住居は洞窟から始まり、やがて床・屋根を持ち、現在では一般的に地面に対して垂直の壁によって囲われていますが、住居の主な役割が外部の雨や風、直射日光や外敵などから身を守るシェルターであることは今も昔も変わりません。建築物は一般に屋根・壁・床により境界を形成し、そういった外部(要因)から分離した内部をつくっているといえます。

トルコ カッパドキア 洞窟住居:紀元前から住居として使用されていたという洞窟住居

内部と外部の境界部分には窓などの開口部が設けられます。シェルターとしては出入りのための開口部があればよいですが、現代の建築物の開口部は光・風・熱・空気・香り・音、そして風景を取込み、より快適な内部環境を得るための内部と外部を繋ぐ接点です。
一方、熱・埃・臭い・音・視線、そして他人・・・。開口部は時に不必要な侵入・損失をまねきます。
窓は様々なメリットとデメリットを合わせもつ存在であるからこそ、窓をどうデザインするかというのは、その建築そのもののあり方をデザインすることであり、建築設計の醍醐味の一つと言えます。

どこを窓にするのか? :位置、方位、向き
形式は?  :ポツ窓、横連窓、スリット、全面
大きさや数はどうするか? :大きさ、高さ、数
素材は何か?  :ガラス、ガラリ、パネル
開け方は?  :開き、引違、縦軸回転、突出、外倒し、内倒し、FIX

人間の知覚の中で最も支配的と言われるのが視覚ですが、建物を設計する上においては特に窓を介して内外を視覚で繋ぐということを強く意識しています。

腰壁の高さ

内部と外部を視覚的に繋ぐ窓はガラスの透明度も重要ですが、腰壁・垂れ壁・袖壁など窓の廻りの壁がどのようにつくかが重要と考えています。

一般的に腰壁と言われる立ち上がりの壁は人間の腰高程度の高さ(フロアレベルから1m程度)が一般的です。出入りの必要のない窓では一般的な腰壁高さを採用することが多いと思います。
しかし、条件や要求の異なる様々なプロジェクトにおいて、内外をどう繋ぐのかを考えた時、それぞれ個別のあり方があるように感じます。

ほうりん保育園

立ち上がることのできるようになった園児が安全に外部を眺められる腰部のFIX窓。

外部が眺めることのできるように園児の視線レベルをFIX窓としている。

一番町弘和ビル

奥行きが深く、同規模の建物が近接する隣地側からは採光できない。そのため、できる限り道路側から建物の奥まで光を届けたい。全面ガラスだが、腰壁部と垂れ壁部にはルーバーを設置して明るいながらも落ち着いた内部空間となるように計画している。

虎ノ門ビルファサード改修

全面ガラスのデザインだが、下部天井の折り上げによって400mm程度の腰壁を確保している。全面ガラスのデザインであれば、床からのガラスが一般的であるが、レベルを操作することで腰壁を確保し、開放感を保ちつつ恐怖感を低減している。

内外で連続する床・壁・天井

内外を視覚的に繋ぐために腰壁・垂れ壁・袖壁など窓の廻りの壁を付けないという選択もあります。特に床・壁・天井が内外で連続するように見せることで、空間の連続性が高まり、内外が繋がりを強めることも可能です。

PWSQ2

傾斜する歩道なりに連続する大型ガラス。歩道と店内の閾(しきい)をできる限り感じさせないよう設計されている。

一番町弘和ビル 7階

床・壁をそれぞれ連続させ、外部のデッキ空間、庭を取り込んでいる。

MY邸プロジェクト

内部床とデッキテラスが連続する。窓際に外部軒天と同面となる間接照明を設けて天井の内外の連続性も確保している。

KG邸プロジェクト

床と天井を連続させ、コーナー部をひらいた開放的な空間とすることを目指している。

そのプロジェクトのメインとなる空間について、内外をどう繋ぐか?その考え方と具体的な解決方法が外観にも大きな影響を及ぼし、その建築を特徴づけるものとなるものと考えています。


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